読書アウトプット記録

本から学んだ内容をアウトプットすることで自分自身の記憶に深く落とし込むことを目的としています。

本要約「算数授業のユニバーサルデザイン」ー志水廣ー

志水廣さんの、「算数授業のユニバーサルデザイン」という本の内容を要約して紹介したいと思います。

発達障害のある子どもにとって易しく分かりやすい授業をするための手立てについて学びたいと思って手に取った本です。

 

本の概要

本書は、算数の授業をユニバーサルデザイン化するための具体的な手立てについて書かれています。

明日の授業からでも使えるような具体的な60の手法が、「わかる」「できる」「そろえる」「よりそう」といった4つの視点からまとめられています。

 

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインとは、

障害のある人も障害のない人も、全員が過ごしやすいような環境作り

のことです。

つまりユニバーサルデザイン化された授業とは、

障害のある子どもも、障害のない子どもも全員にとって分かりやすい授業

と表現することができます。

ポイントは、障害のある子どもに合わせた手立てや環境整備は、

全員の子どもにとって分かりやすい授業や学習しやすい環境に繋がるということです。

通常の学級に在籍する発達障害のある子どもの割合が増えているといわれる近年の教育界において、ユニバーサルデザインの考え方は必要不可欠になってきていると思います。

 

本の内容

算数の授業のユニバーサルデザイン化(以下UD化)の目標は、

全員の子どもに、「わかる」「できる」体験をさせる。

ということです。

その為の手立てとして、

見える化

② 焦点化

③ そろえる化

④ できる化

といった4つの視点に整理して紹介していきます。

 

見える化

 

発達障害のある子どもは、目に見えない概念や情報をイメージすることが苦手と言われています。

またワーキングメモリーが弱いため、

音声による情報を理解したり記憶に留めておくことも苦手です。

そのため、目に見えない情報を見えるようにして提示したり、

定義や計算の手順を可視化して黒板に掲示しておくことが、発達障害のある子どもの理解を助ける有効な支援になります。

例えば、

・時間の流れや小数・分数の大きさを数直線に表して掲示する。

・文章問題を図に表す。

といったことが挙げられます。

また、見えるかする際には、

・見やすいように大きく提示する。

・ねらいに沿った情報を提示する。

・教えたい部分をあえて隠す。

といったことが大切になります。

とにかく、UD化された算数の授業では、文字や言葉だけで子どもに教えようとするのではなく、

一目で見て子どもが「なるほど」と思えるように、図や具体物を使って見える化してあげることが重要なポイントになります。

 

 

② 焦点化

焦点化とは、授業で教えるポイントをなるべく一つに絞るということです。

45分の授業の中で、あれもこれもと教えようとすると全てが中途半端になってしまい、本当に大切なことを子どもに身に付けさせることができません。

また、発達障害のある子どもは情報を整理する力や、たくさんの情報から注意するポイントを選択する「選択性注意」の力が弱いため、学習内容が複数になってしまうと、

どこに焦点を向ければいいのかが分からず、頭がパンクしてしまいます。

そしてこれは少なからず他の全員の子どもにも言えることであると思います。

よくUD化された教室では、黒板前方の掲示物を減らし、刺激を減らすことが大切といわれます。

これと同じように、授業の中で取り扱う内容も精選し、

なるべくシンプルな授業デザインにすることが、発達障害のある子どもを含め、全ての子どもにとって易しく分かりやすい授業に繋がるのです。

よく指導書では、似たような2つの学習内容が45分の授業の中に組み込まれていることがあります。

ですが、あえてそこで

「今日の授業ではこれができたらいい!」

とねらいを一つに絞り、シンプルな授業を心がけることが大切になります。

 

 

③ そろえる化

そろえる化とは、子どもの理解をそろえるということです。

子どもの理解がそろっていないまま授業を進めていくと、

できる子とできない子の差がどんどん広がってしまいます。

これはUD化とは全く逆の授業であると思います。

教師は、一つの授業の中で全員の理解がそろっていることを確認してから、次の展開に進めなければいけないのです。

本書で述べられている、理解をそろえる場面とは、以下の4つになります。

 

1.レディネス

本時の内容に入る前に、必要な既習事項を理解しているか確認する。

復習問題や復習プリントが有効。

2.問題

問題文の意味や聞かれていることを把握しているかを確認する。

ここが授業のスタートになるので、ここで理解できていなかったらそのあとでずっとつまずくことになる。問題文を理解させるには、写真や絵、図と関連付けたり、

子供にお話化させて話させることが有効。

3.見通し

個人解決の前に、課題解決の方法の見通しを全員に持たせるようにする。

黒板に書いたり、隣通しで確認させてから個人解決の場に移らせるようにする。

4.解き方

練習問題に入る前に、問題の解き方を全員に理解させる。

具体的には④の「できる化」で紹介する、

適用問題定着法や、同一問題練習法

が有効となる。

 

これらの場面で全員の理解を丁寧に確認し、足並みをそろえながら学習を進めていくことがUD化された授業では大切になります。

 

 

④ できる化

できる化とは、子どもの「できる」を保証するということです。

授業が「分かる」だけではなく、「できる」ようにしないといけないのです。

子どもは、問題が「できる」ことで達成感を感じるからです。

45分の授業の中で「できる化」させないといけないことは、

教科書にのってある適用問題です。

その適用問題を子どもが一人でスラスラできるようにすることを目標にしないといけません。

そこで有効なのが本書で紹介されている、

適用問題定着法と、同一問題お試し法です。

 

適用問題定着法

これは、適用問題に取り組ませる前に再度解き方を一斉指導で確認し、

全員が「できる」状態にしてから取り組ませるという方法です。

最悪なのは、「とりあえずやってごらん」と投げやりに問題に取り組ませることです。

「できる」状態にするためには、

・似たような問題を前で教師が解いて見せる。

・計算の手順を全員で声に出して確認する。

・フラッシュカードで解き方を何度も確認する。

といった方法が有効です。

 

 

同一問題確認法

これは、ひっ算の問題など手順が複雑な問題などで

子どもに取り組ませる問題と全く同じ問題を、一斉指導で教師が確認し、

そのあとに同じ方法で子供に取り組ませるという方法です。

つまり、同じやり方をなぞらせるのです。

同じ問題を扱うことで、子どもは安心して取り組むことができます。

 

 

また、上記2つの方法以外にも、計算の手順を細分化して黒板に書き、子どもに声に出させながら計算させるという方法も有効です。

声に出すことで、手順が頭に深く定着するからです。

 

 

まとめ

以上が本書の主な内容です。

これ以外にもたくさんの細かい指導技術があったのですが、

たくさんありすぎて正直まだインプットしきれていないところがあります。

なのでこの本は再度精読し、大事なポイントをもう一度このブログにまとめたいと思います。

今回は、授業をUD化させる為の原則的なところとして、

「見えるか」「焦点化」「そろえる化」「できる化」

が大切だということを自分の中で確認しておきたいと思います。