2022⑥「特別支援学級感動の学級作り」ー小野隆行ー
特別支援学級での授業作りや、学級経営、子どもとの関わり方、
子どもの情緒を安定させるためのシステム等について書かれています。
1.授業システム
① 授業開始を待たない。
よく「全員がそろうまで授業開始を待つ」場面がありますが、
チャイムに間に合っている子どもに空白の時間を与えることになります。
準備ができている子からチャイムと同時に授業を始めることで
子どもは見通しをもつことができ、授業が安定します。
②常に体感させて理解させる。
特に発達障害の子供はイメージする力が弱いので、
体感することで初めてしっかりと理解することができます。
例えば、子どもが集中している状態のときに、
「これが集中しているというんだよ」
と教えてあげます。
すると子どもは初めて「ああそういうことか」と
理解することができます。
向山氏の有名な跳び箱指導法も、体感させながら指導をしています。
「体感が伴っているか」という視点で自分の指導を見つめなおしていく
ことが大切です。
➂刺激を減らす
発達障害の子どもは視覚・聴覚といった刺激に弱いです。
選択性注意という力が弱く、たくさんの情報の中から
必要な情報に注意を向けることが苦手だからです。
教室前方の掲示物をすっきりさせるといわれるのはそのためです。
黒板や資料は大事なところが一目で分かるように
なるべくシンプルにすることが大切です。
また教師の言葉も聴覚的な刺激になります。
よって教師の言葉もなるべく減らしていくことが求められます。
「必要以上にしゃべらない」ことで子どもは落ち着きます。
2.教師の指導
①まず気持ちに同意する。
気持ちが乱れている子どもにどんな正論を語りかけても
子どもの脳には届きません。
なのでまずは気持ちを聞き出し、共感をして
落ち着かせます。
そしてその後に指導をするようにします。
②常に笑顔でいる。
教師の笑顔は子どもに安心感を与えます。
何があっても常に笑顔で子どもと関われるのが
プロの教師だと思います。
子どもが反抗しても指示に従わなくても穏やかに笑顔で
接するということが、子どものの情緒の安定につながります。
➂怒鳴らない。
大きな声で子どもを威圧するような指導をしても、
子どもに言葉は届きません。
ただ、「怒鳴られた」という印象が強く残るだけです。
特に支援学級に通う子どもたちは自己肯定感が低くなりやすい
ので、なるべく自尊心を傷つけない指導をすることが大切です。
怒鳴るのではなく、毅然とした態度で
「~はよくないよ」「~はよくないから謝ります」
と伝えることが大切です。
3.その他
①学習道具に注意する
コンパスや分度器など、子どもが使う学習道具には、
子どもにとって使い辛いものがよくあります。
例えば、
無駄に線が多い分度器
ネジがゆるく直ぐに曲がってしまうコンパスなどです。
手先が不器用な子供たちにとっては、
このような道具は学習の妨げになってしまいます。
そのことをしっかりと保護者に伝え、
使いやすい道具を用意することが大切です。
②セロトニン5を意識する。
セロトニン5とは、子どもに安心感を与えるための
教師の5つの関わり方のことです。
・見つめる
・微笑む
・触れる
・褒める
・話しかける
といったかかわり方をすることで
子どもの脳にセロトニンという幸せを感じるホルモンが
分泌され、安心感を与えることができます。
➂子どもの立場に立つ
支援級に通うような子どもは、他の子どもと比べて
「できないこと」や「辛いと感じること」が多いです。
例えば、
・たくさん人がいるのが辛い
・じっと座って話を聞いているのが辛い
・次に何をするか分からないのが辛い
といったことがあります。
だからこそ常に、
・子どもがどんな気持ちでやっているのか
・今どういう状態なのか
・何が子どもにとって一番成長につながるのか
と、子どもの立場に立って考えて関わることが大切です。
例えば、
「授業は45分間参加するもの」ということが
全ての子どもにとって成長に繋がるとは限りません。
集中が持続し辛い子にとっては苦痛にしかならない場合があります。
そういう子にとっては、まずは
「30分間頑張ったら残りの15分は休憩してもいい」
とハードルを下げ、少しずつ参加できる時間を延ばしていく
といったようにスモールステップで環境作りをしていった方が
成長に繋がるのです。
このように、「子どもが何に困っていて、どういう環境が一番
子どもの成長に繋がるのか」と考えていくことが
特別支援学級において一番大切になるのではないかなと思います。